ナルコレプシーと鍼治療 その1

Saturday 29 April 2023

ナルコレプシー

 おそらく、私のようにナルコレプシー患者であるならば、一度は鍼治療に希望を託したくなることだろう。西洋医学でオレキシンがないということはわかっても、現時点で根本治療がないとなれば、東洋医学でなんとなくできないか、藁にもすがる重いになるのでは当然のことにように思える。

 かくいう私も、これまで数回鍼治療に取り組んできた。最初は、ナルコレプシー発症当時、まだ「ナルコレプシー」という診断がつく以前の頃、寝入りばなの悪夢がひどく、ベッドに入って電気を消すことさえ怖くてできなくなってしまったときだった。母が、地元で名医として噂になっていた鍼治療の先生のことを聞きつけ、そこに通うことになった。1回6000円ほどで、5回ほど行っただろうか。鍼に電気を流したり、先生の指圧もしていただいた。確かにそれをやっていただくと、心身がリラックスし、その日は少し眠りが良くなった気がしたが、劇的な変化はあまり感じられず、結局2月ほど通ってやめてしまった。その後も、症状のために仕事で失敗するたびに、自己嫌悪に陥り、「なんとかせねば」という思いでいくつかの鍼治療に数回通ったことがあったが、結局長続きしなかった。

 それから10年ほど経って、また鍼に行く機会があった。首を軽く鞭打ちした時に、知り合いがそこを紹介してくれた。中国人のかなりの名医だという。首を診断してもらうと間もなく、針を手に差し始めた。なんとも言えない痛みを感じた。神経を直接いじるということはこういうことなのか。それから、「もう大丈夫」というから、恐る恐る首を傾けると、不思議なほどに痛みが軽減している。そんなことがあったから、ナルコレプシーのことを伝えると、「不眠治療ね。3ヶ月くらい毎週通えばよくなるよ。そしたら少しずつ薬を減らしていきましょう」と言われた。いやいや、ナルコレプシーのことご存知ですか。オレキシンがほぼないんですよ、と思ったが、自信ありげなその様子にとりあえずダメ元でやってみようと思った。

その2に続く。