『スマホ脳』(アンデシュ・ハンセン著)を読んで考えたこと

Thursday 31 December 2020

  先日こんなことがありました。私の中学校の生徒が学校にスマホを持ってきて使用していたことが判明し、保護者に引き取りにきていただいたときのことです。お母様だけがいらっしゃって生徒自身はその場にいなかったのですが、そのときにそのお母様が、「ここで受取ってしまうと子どもにすぐ渡してしまうので学校で保管してください」と仰いました。そこでこちらが預かっていたのですが、翌日、またいらっしゃって、「やっぱり返してください。あれがないと子どもが家で暴れるので」と仰いました。うーん、我が子なんだから、しっかり話をして、我慢することを教えてほしいなと内心思ったのです。

 このあと、たまたまAmazonで見つけた『スマホ脳』を手に取りました。本書の第3章は「スマホは私たちのドラッグである」というタイトルがついていて、その中でipodやiphone開発に携わったApple社の幹部トニーファデル氏の話が出てきます。彼はこう言っています。

「冷や汗をびっしょりかいて目を覚ますんだ。僕たちは一体何を創ってしまったんだろうって。うちの子供たちは、僕がスクリーンを取り上げようとすると、まるで自分の一部を奪われるような顔をする。そして感情的になる。それも激しく。そのあと数日間、放心したような状態なんだ。」

 この話を読んで、私は先日のスマホ事件のことを思い出しました。あれはお母様が躾があまいとかそういう話ではなく、スマホの中毒性が私の認識していた以上に子どもの脳を侵食していたんだなということです。スティーブジョブズやビルゲイツもその有害性を把握していて我が子には中学生頃までスマホを自由に使わせていないということです。

 スウェーデンでは乳児の4人に1人がインターネットを使い、2歳は半数以上が毎日ネットを使っており、7歳でほぼ全員が毎日使用し、11歳でほぼ全員がスマホを持つ。10代は1日3〜4時間スマホに費やすということが調査から分かっています。日本も全く同じ状況ではないでしょうか。

 このスマホのもたらす影響はすでに多くのネガティブな研究結果が日々出ているそうですが、そういったものが一定のコンセンサスを得るには時間がかかるもので、それが実証された時には、すでに後に引けない状態になっているという恐ろしい事態が待っています。日本でも中学生に携帯を持って来させる議論が出たり、授業でタブレットを活用させるのに躍起になっていますが、そう言っている方々は世界中から発表されるエビデンスをみていっているのでしょうか。非常に疑問です。日本が他の国と同じ轍を踏まないことを願い、行動したいと思います。