現場教員として、GIGA スクール構想への直感的な印象

Saturday 26 December 2020

学校教育


  GIGAスクール構想がものすごいスピードで進んでいることを現場にいて実感します。私の自治体では、ここ数週間で気づけば校内の無線LANが整備され、もうあと数ヶ月で生徒一人一台のコンピューター端末が実現するそうです。

 今年の我が校の研究授業のテーマは、「タブレット端末を活用した対話的で深い学び」ということになっていました。昨年タブレットが突然やってきたので教員らはまだ使い方が十分にわかっていませんでしたが、とにかく全教科で、お試しの気持ちで使ってみようということになりました。そこで英語科の私は、英語スピーチをひとり一人させ、その評価を生徒同士でつける際に使うことにしました。他の英語科の先生は意見の出し合いや、お互いの英文をチェックするために使われていました。また他教科の先生方の授業をみると、国語科では「写真と一句」をスライド一枚で表現したり、体育科では自分の運動フォームを動画で撮ってその場で確認したりという使い方をされていました。全体的にみると、意見の出し合いツールとして使っている方が多かった印象です。

 さて、年末に研究協議会と振り返りが行われました。今回の研究授業研修の成果は、タブレット端末の使い方を理解することができたという声が多かったです。一方で課題に関してはいろいろでました。まず1番に、多くの教員が使い方は理解したものの、使う意味があまりわからないということでした。これはなかなか致命的なことでした。私自身使って感じましたが、タブレットを出して配って立ち上げて、とやるよりも、アナログの紙と鉛筆、黒板とチョークの方がずっと速く済み、またタブレットを通すより、より学びが直感的でリアルなのです。さらに、タブレットを使うことによって、「対面のやりとり」が減るということに気づきました。ある授業では、授業開始から10分間タブレットに向かって課題に取り組むことがありました。それをみていて気づいたのですが、そもそも研究主題である「タブレット端末を活用した対話的で深い学び」という言葉に矛盾がありました。タブレットを使うと生徒は画面を見つめる時間が多くなり、以前よりも対話時間が減ります。せっかく同じ教室で学んでいるのに、ただ画面を見つめていてはもったいないという感じでした。これがもし教室外の人と交流するならそのメリットを活かせますが、同じ教室にいる人とわざわざタブレットを介して意見を出し合うことには疑問符がつきました。

 学校での学びのいいところの1つは、生徒同士でお互いに学び会えるところです。これとタブレット使用は相性があまりよくないなと感じました。もちろん、我々教員が十分に機器を使いこなせていないということ、使用アプリが未熟であるというのはありますが、それにしても今後どうやって生徒にひとり一台配布されるタブレット活用していこうかと、悩まされる結果になりました。

 GIGAスクール構想で、どういう力を身に付けさせたいのか、そこが個人的によくわかりません。ただICTに慣れる程度なことではないと思いますが、現状ではそういう感じになっています。タブレットを使うための学習ではなく、学びをより深めるためにどうタブレットを生かすか、試行錯誤が必要です。