デジタル教科書は諸刃の剣である

Sunday 5 April 2020

学校教育 英語教育

 新しい学校ではデジタル教科書を使って授業が行われている。前の学校では購入してはいたが、教員たちは全く使わず、自作のパワポやフラッシュカードを使って授業を行なっていた。(だったら買わなきゃいいのだが、教育委員会が親切にも買ってくれたらしい)。新しい学校に来て、教科書も変わったし、「郷に入りては郷に従え」のような気持ちでデジタル教科書や教科書指導書のCD-ROMを見てみた。

 非常に優れている。デジタル教科書では、新出単語から本文音読まで全てがボタン操作1つで可能になる。また指導書に付属しているCD-ROMには、私が自作していた教科書復習シート(いわゆる北原先生のEnglish express)が既にデータとして入っていた。質も高くそのまま使えそうである。さらに文法定着問題や、まさかの定期考査問題までデータが入っている。まさか定期考査をこのまま使おうとは思わないが、テストづくりの際に大いに参考になりそうである。教師は多忙である。仕事は尽きない。使えるものは使い倒すべきだ。余分にできた時間をアウトプットの評価の時間に使おう。

 そこまで考えて、ふと心の奥から「それでいいのか」という声が聞こえてくる。

 リサーチによれば、教師が自分で作成した教材で教えた方が、より生徒の成績が上がったというエビデンスがある。当然といえば当然である。自分で教材を作成するには、目の前の生徒の一人ひとりの顔を思い浮かべながら授業準備をする必要がある。題材も教科書の内容以上のことを自分で調べてみて、自分が面白いと思ったことを生徒に伝えて共有できる。私の場合、教材研究の過程で、自作のワークシートやパワポができていくという感じである。調べれば調べるほど面白いことがわかってくるから、教えるときもワクワクしながら教えることができる。

 ではデジタル教科書はどうか。確かにたいして準備はしなくてもある程度の形の整った授業ができる。しかしそこには教える時のワクワク感がない。「ただ教科書の表面をなぞっていく」感覚である。それは間違いなく生徒に伝わる。授業がつまんなくなり、生徒のやる気がなくなるのである。

 デジタル教科書は便利で活用すべきなのかもしれない。しかしそこには、教師にとってとても大事な「教えるワクワク感」が失われる可能性が常にあるということを忘れてはいけないと自分に言い聞かせるのである。