「教科書への直接書き込み問題」

Saturday 25 January 2020

学校教育 英語教育

 皆さんこんにちは。
 今日は私が数年間悩んでいた「教科書への直接書き込み問題」について皆さんと共有できたらと思います。

 英語の教科書への書き込みについて、私は学生時代、英語に関わらずどの教科でも、「教科書には書き込みをしないで、大事なことはノートに書きなさい」と言われてきました。教科の中でも、一番教科書に書き込みたくなるのが英語と国語ではないでしょうか。ふりがなや発音、意味についてすぐに書き込みたくなりますよね。

なぜ教科書に直接書き込むのはよくないのか 

   そもそもなぜ教科書に書き込むことがよくないのでしょうか?私は小学生時代、担任の先生に「教科書を見返す時に、真っ白な状態で授業を思い出せるようにしてごらん」と言われたことを覚えています。つまり、復習の時のために、教科書に直接書くなということでした。でも生徒によっては、「どう勉強しようが、俺の勝手でしょう」という子もいるでしょう。メモを直接教科書に書き込んだり、中には全く板書しなくても、頭に入っている人もまれにはいます。そういう子にノートをとることの重要性をどう説けばいいのでしょうか。私なりに考えてみました。

ノートに書くことの本当の意義

 私はノートに書くことの意義を批判的思考、生涯学習、AI時代という3つの観点から考えていきたいと思います。

教科書を学ぶのではない、教科書で学ぶのである

   これは教師の間では有名な言葉ですよね。特にカリキュラムマネジメントが指導要領で提示されてから、学校や教師が目の前の生徒らに合わせてカリキュラムメイキングをする必要があることから、さらにこの言葉の重みが増してきています。教科書は教育の質保証という観点から確かに必要なものですが、一方で使い方を間違えれば、子どもたちをフレームワークに押し込めることにもなります。

 そこでノートの必要性が出てきます。ノートはただ教科書の内容や板書を何も考えずに写すためのものではありません。その授業で自分の気づいたこと、考えたことなどを付け加えることで、学びを自分の血肉とすることができるのです。それこそがノートを書くことの大きな意義の1つです。

一生学び続ける時、教科書があるとは限らない

  最近は生涯学習やリカレント教育という言葉が盛んに言われるようになりました。技術革新が加速度的に進み、社会・経済は急速に変化しています。そのような状況に対応していくには、絶えず学び続ける姿勢、そして学習スキルが必須になってきます。

 さて、この生涯学習ですが、学校のように常に1冊の教科書があるわけではありません。むしろない方が多いでしょう。そんな時に柱となるのが、ノートです。さまざな文献をよんだらその内容を一冊のノートにまとめておけば、時間が経っても、すぐに見返すことができます。生涯学習という長いスパンでの学びを継続していくためには、ノートに書くことは不可欠なスキルになるのです。

情報収集力や伝える力を養う

  かつて「東大生のノート」という本が話題になりましたが、どの人のノートもとてもスッキリきれいにまとめてあって、芸術的とさえ言えました。頭のいい人はノートをまとめながら頭の中を整理できているんだなと感じました。
 
 よく、「色ペンや図などを駆使してノートにまとめるのはきれいだけど、テストでは全然振るわない」という生徒がいます。女子に多いです。そういう時教師は、

「まとめることで満足してないで、覚えてないと意味がないですよ」

 と指導しがちかと思います。しかし本当にそうでしょうか。今や情報は検索すればすぐわかる時代で、今後AIの技術が発達し続ければ、かなりの仕事をAIが代替するようになるでしょう。そうなったとき、暗記力というよりかは、それよりもむしろ情報編集力や伝える力の方が重宝されてくるのではないでしょうか。その点において、「ノートにきれいにまとめられる」ということは、かなり誇るべきスキルですし、逆にどんなに暗記力が良くても、数多ある情報を適切にまとめ、処理し、相手にわかりやすく伝えることができなければ、今や評価は低くなってしまいます。そのために、授業で習った新たな知識を自分なりにまとめ、見やすいノートを作っていくことは、社会の出て働くためのいい訓練になるのではないでしょうか。

まとめ

 上述の通り、今後社会においてノートの重要性がさらに上がってくるのは間違いないことでしょう。生徒のノート書きの力を伸ばしていくには、教師の言葉かけや、時にはいいノートのまとめ方をみんなの前で評価してやることもいいでしょう。教師である我々が、改めてノートの意義を確認し、説明してやることが必要なのではないでしょうか。





参考)
生涯学習の意義について、文科省のホームページでは3つの点が挙げられています。

   1. 社会・経済の変化に対応するため,人々は絶えず新しい知識や技術の習得を
     迫られている
   2. 自由時間の増大などの社会の成熟化に伴い,心の豊かさや生きがいのための学
     習需要が増大している 
   3. 生涯学習の基盤を整備し,学歴だけでなく様々な「学習の成果」が適切に評価
     される社会を築いていくことは,これまで進められてきている教育改革の課題
     の一つである学歴社会の弊害の是正にもつながる