教師に絶対読んでほしい本シリーズ 『AさせたいならBといえ』(岩下修著)

Tuesday, 31 December 2019

学校教育 教員採用 書評

 言わずと知れた、名著である。教育に携わる方であるなら一度は読まなければいけないと思われる書である。まえがきには、
 
元来、私は、「言葉」に弱点を持つ教師である。だからこそ、「理屈だ」「仮説だ」「発見だ」と恥知らずに書き進めることができたのだろう。

とある。この言葉から、謙虚によりよい教育を最前線で追求した、理想的な教師像といえる筆者の姿が浮き上がってくる。現場の教師の実践知が詰まった本書から、いくつか私が心に残ったところを紹介する。

・発問は子どもを知的に動かすためのものである。ABの落差に心が動く。
・教師の言葉のまずさは、「平板、通俗的、一般的、事務的、機械的」なところである。(斎藤喜博)
一時に一事を指示せよ。最後の行動まで指示せよ (向山氏)
・緊張の中にも遊びがある雰囲気がいい

 では、Bの言葉を見つける時に意識すべきことは何なのか。筆者は
「「ゆれのないもの」を提示することにより、子どもを知的に動かすBの言葉を見つけることができる」
 
 といい、「ゆれのないもの」とは

①物 (例)「シャボン玉をふくらますように」
②人    「端っこの〜くんを見て話しなさい」
③場所   「どこで主人公の心はゆり動いたか」
④数    「床タイルをひとます5回ずつ拭きなさい」
⑤音    「雨の音にじっと耳を傾けてください。」
⑥色    「〜ページの背景何色でしたか?」

としている。
 また注意点として、

・子どもを知的に動かすには常にその言葉が彼らにとって新鮮である必要があるので、同じ表現を繰り返し使えない。
・あくまで子どもを「知的に、前向きに」動かす言葉であるべきである。
・子どもを動かすこと自体が目的ではなく、教師が常により知的な言葉を探すことによって、言葉に敏感になること、そして教師として成長していくことが大事。

がある。

 本書で紹介される実践の中で得た知見は秀逸である。本書を読むことによって、是非発問、声かけの仕方を根本的に考え直すべきかと思われる 。