なぜ逆向き設計が実行できないのか。

Thursday 24 October 2019

学校教育 教員採用

 こんにちは。前回は逆向き設計のレッスンプランがメリットしかない話をしました。
しかし私がようやくこれができるようになってきたのが6年目を迎えてからです。それまでは、せいぜい2、3時間先までのことを考えて、毎日授業準備に追われていました。ではなぜ6年もかかってしまったのか、私は2つの原因があったと思います。

 1つ目は日々の担任業務や部活動に忙殺されて、本来一番大事な授業に十分な時間とエネルギーを割く余裕がなかったことです。私のいた中学校では、生徒が学校内にいる18時までは、職員室の自席に座って授業準備をしているなんてありえない、という雰囲気がありありました。そして18時以降は担任業務。そのため授業準備は21時くらいに帰宅してから23時くらいまでの時間、そして翌朝の授業前の1時間くらいになります。疲れきった後での準備、なかなか先のことまで考える余裕がなかったのです。
 もう1つは、実際に3年間を通して自分でやってみないと全体がよくわからないということです。新卒でいきなり4月から教科書を渡され教え始めるのですが、はっきりいって授業をなんとか成立させるので精一杯です。全てが手探りで、先輩に聞いたり、研究会に参加していろいろ勉強するのですが、やっぱり自分でやってみないとわかりません。この3年周期を2回ほど繰り返して、私はようやく三年間を通して身につけさせたい力が見え、さらに単元毎で身につけさせるべきことが見えてきたのでした。

 ここで逆向き設計のことを書きましたが、自分がそうであったように、初めから完璧にできる必要はないと思います。新人教師は授業以外の業務で一杯一杯でしょう。若手ということで仕事もたくさん任されます。そこで最初の三年間はちゃんと授業を成り立たせることで十分だと思います。ただ、プロの授業者としてその後成長してくためにすべきことは、記録を残しておくことです。これは絶対にやるべきです。恥ずかしながら、私はこれすらも続けることができませんでした。毎回授業が終わってすぐにコメントを残そうと思うのですが、授業が詰まっているので職員室に帰ってくる間も無く次の授業が始まります。別にこの記録を誰かにチェックされるわけではないので、優先順位が低くなり、その日の授業の反省ということがなされなくなるのです。

 そこでオススメは、記録を授業内に終わらせてしまうことです。振り返りは教師にとって大事なように、生徒にとってもとても大切です。授業最後の5分間をその日学んだことの振り返りの時間にしましょう。その間に教師も記録をつけてしまいましょう。ただ5分はあっという間です。だから記録すべきことをあらかじめ決めておきましょう。例えば
・褒めることができた生徒
・特に強く指導した生徒
・うまくいかなかったこと、うまくいったこと
などです。

 ちなみにここで宿題をメモしているようではダメですよ。宿題を何にするかは指導計画の時点で決めておかねばならないことです。できることはなるべく計画の時点で徹底的に準備しておくこと、そうすると授業後の記録も少なくて済みます。

 さて、上記2つの逆向き設計ができないのは「言い訳」として捉えられてしまえばそれまでですが、この忙しさが若手教師の実情なのです。上手に周りを利用しながら、とにかく三年間!なんとか乗り切りましょう。健康が大事ですよ。ではまた。

逆向き設計を学ぶには…

第一人者はWiggins/McTigなので、英語で読めるなら彼らの著書
"Understanding by design"
これを京都大の西本加名恵先生が日本の教師に向けて訳してくださっているのが
『理解をもたらすカリキュラム設計―「逆向き設計」の理論と方法』

最近では2019年3月21日、西本先生と石井英真先生の
『教科の「深い学び」を実現するパフォーマンス評価: 「見方・考え方」をどう育てるか;ミカタカンガエカタヲドウソダテルカ』 
というのもよさそうです。