頭のいい子ほど陥りがち 暗記をすることで論理的に考えることができなくなる

Friday 18 October 2019

学校教育

 最近話題になっているAI研究者の新井紀子先生の著書『AI vs.教科書が読めない子どもたち』を読んで、はっとさせられたところがありました。新井先生が「頭のいい子は暗記をすることで点数がとれることを知る。暗記の方が楽なので、結果、論理的に考える力が身につかない」と問題提起していたことです。まさに自分にあてはまることだと思いました。

 私は中学受験をしましたが、典型的な文系タイプでした。社会や国語はすらすら頭に入ってきたのに、算数はどうしても好きになれませんでした。別に苦手という訳でもなかったのに、好きになれなかったのです。それでもなんとか中学受験を乗り越えましたが、大学受験のときにまた数学の壁に悩まされます。今でも覚えていますが、そのときすがりついた参考書が「数学は暗記だ」を全面に押し出したものでした。この宣伝文句は文系人にとってとてもパワフルなものでした。それからその本を購入し必死に勉強したのですが…結局高校2年生の2学期ごろに数学を諦めることになってしまいました。今思えば、中学受験のとき、より速く解答にたどりつくために丸暗記した勉強法が、その時には役に立ったのかもしれませんが、長期的に見れば、数学的思考を奪い去るものとなってしまったのでした。小説をじっくり味わいながら楽しむように、算数でも1問1問、自分で納得するまで考え抜くべきだったのです。

 私が数学ができなかった理由は、この本が示す通り、社会や国語で点を取るために通用した暗記型アプローチが、数学では通用しなかったことにある気がします。私は数学でわからない問題があるとき、とてもイライラしました。答えがあるのに、それがわからないからです。そのイライラは、今思えば、論理的に考えることが脳にとって大きな負担だったので起きた感情だと気づきました。暗記型アプローチは、確かに暗記という面では多少負担になるかもしれませんが、論理的思考ほどは大きくありませんでした。著者は「人間の脳は楽なことを好み常にさぼろうとする」ということも記していましたが、脳を鍛えるためには、ダイエットのように、脳自身がいやがることを自覚して、衰えないように意識的に鍛えていくことが必要なんですね。