昨今は教員採用試験の合格の倍率が低迷していることが問題となっています。教員の質を保証するには最低3倍はないといけないと言われていますが、それすらも下回っている自治体が少なくない状況です。その原因はいくつか考えられますが、その1つに教員が「ブラック」な労働環境というイメージが広がってしまったことがあるでしょう。これを払拭するのはなかなか難しいことです。共働き世帯が当たり前になりつつある社会において、学校に課せられる期待や責任はそう簡単に減ることはないでしょう。さらに、就職売り手優位市場が続いていることも要因の1つになると思われます。これも景気が大きく影響するので、そう簡単に改善はできません。しかし私がここで話すのは、教員育成システムの欠陥という問題で行政の裁量次第で改善できるものです。ぜひ皆さんにも一緒に考えていただければ嬉しいです。
さて、私が問題と思っているものは教員育成から採用までの制度です。具体的には大学での教育実習から採用試験を受け、教壇に立つまでです。ここでは3つの問題を指摘したいと思います。
まず1つ目は、大学で教職課程をとるためのハードルが高いことです。現在の制度は、あろうことか入り口の教職課程をとろうかどうかという時点で、迷っている学生を絞りすぎているのです。昔のように倍率が高かった時代にはあっていたかもしれませんが、今の低倍率の時代にはふさわしくありません。多くの大学でこの説明会は主に大学1年向けに行われると思います。なぜなら教職課程をとるには教職課程の単位取得が必要で、4年間で取りきるには1年生から計画的にカリキュラムを組んでいかないと厳しいからです。そして大学側の姿勢はおそらく、「免許をとるだけで教員になる気がないなら、どうせ10年で失効するんだから教職をとらないで」というものではないでしょうか。私の大学ではそうでした。そこで大半の学生が教職課程を諦めてました。なぜ、こうも厳しくなるのか。それは「軽い気持ちで学校現場に教育実習に来て欲しくない」という現場の先生が多く、大学に対する苦情もあるからだと思います。ではなぜ現場の教員はそういうのか。それは現場では実習生を指導している余裕がないのに、毎日の実習日記や研究授業のアドバイス、最終的な評価などをしなければならないからです。何のインセンティブもないのに、こんなことできません。だから、「教員に本気でなる気がないならこないで」となるのです。しかし私は、低倍率が続く現在、より多くの優秀な生徒が教職課程、そしてその中の教育実習を経験すべきだと思っています。そのために、有効な手立ては、指導教員の指導の負担を減らしてやることです。具体的には、実習生をただの「手伝い」として学校現場の体験をさせ、指導教員が実習日記や研究授業をみたり、評価しなければいけない役割を極力少なくしてやるといいと思います。はっきりいってその後教員として働きたいと思うかは本人次第であり、評価などしてもあまり意味がない気がします。最終的に働けるかどうかを評価する場は、自治体の採用試験でいいのではないでしょうか。それよりも、企業のインターンのように、もっとオープンになって、教師の魅力や大変さを体感させるべきです。私の大学では、教育学部がありましたが、そのなかで中高の教員になったのは10人以下でした。私は何なら教育学部生は2年生で全員実習参加を必須くらいにしてもいいと思います。何ならそれを経て、教員免許を取ろうと決めてもいいと思うのです。そうやって、裾野を広げてやることで、少しでも教員志望者を増やすことにつながると思います。
2つ目の問題は、1つ目の問題に絡みますが、教育実習先を基本的には学生が自分で探してこなければいけない点です。多くの学生は母校に頼みに行きます。しかし中には母校が大学から離れていて、大学に通いながら教育実習ができないという人もいるでしょう。私の周りには、教職ガイダンスでこのことを聞いて、教員免許をやめる人が複数いました。一応、そういう人のために、例えば東京都では大学ごとにまとめて都立学校に申請する制度があり、これは都立出身でなくても申請できます。私自身、私学出身でしたが、この制度に応募しました。それから数ヶ月後ある都立高校から受け入れの了承を得ました。ところがです、何と実習直前になって、担当教員の体調不良から教育実習がキャンセルされてしまったんです!そのとき大学の教職課程センターの人は「止むを得ない」といって何も手助けをしてくれませんでした。こんな無責任な話があるでしょうか。(ちなみにそもそもこの都立の受け入れ制度に申し込んでも受け入れを了承してもらえなかった人もいました)。私としては一般就職のための就職活動を絶って、実習をするつもりだったのにいきなりなしになったのです。大きな憤りがありましたが、いち大学生が文句を言っても何もききいれられないので、私はその後東京都の全ての中学校に電話をかけて自ら頼みこむことにしました。幸運なことに、私を受け入れてくださる中学校を見つけられましたが、私はこのとき、教員養成システムの欠陥を痛感したのです。ではなぜこんなことが起こったのか。それは教育実習先を探すのが学生の自己責任であるところ、そして受け入れるかどうかの裁量権がそれぞれの学校にあるからでしょう。前にも書いたように、進んで受け入れようとはなりません。だから学生は母校の先生に頼むしかないのです。この母校で実習するというものも、はっきりいってあまり良いとは思えません。なぜならもともとお世話になった先生に「配慮」を受けることがあるからです。しかし実際に教員になるなら、何のつながりもない初めからの環境でトライした方がその後のためにいいと思うのです。そこで2つ目の提案は、教育実習先を見つける責任は学生個人ではなく、大学、もしくは自治体、国が負うことです。団塊ジュニア世代が大量退職するなか、優秀な教員の確保は急務となっています。少しでも可能性のある優秀な生徒が実習を受けられるよう、ある程度行政が道を整えてやるべきです。
3つ目の問題は、自治体の採用制度です。最終的に合格が決定するのが遅すぎるのです。企業の場合には、4年生の6月から8月に決まって、10月には内定式です。それに対して、教員採用試験の合格が出るのが10月くらいでしょうか。仮にそこで落ちたら、それから就活をしても遅いでしょう。次の年はニートになりうるのです。中には「期限付き」や「臨時講師」採用制度を実施している自治体がありますが、これらの具体的な話が受験生にくるのは、ひどい時には3月下旬だったりします。受験生のことを何も考えていないといえるでしょう。そこで私は少しでも優秀な人材に教員になる道を開くため、採用試験を2回実施することを提案します。つまり、4年生の4〜5月に実施して合格が8月までに分かるものと、夏休み後の9月頃に受けて10月に結果を出すシステムです。手間や費用は2倍かかるかもしれませんが、教員と一般就活の両方を考えている生徒には優しい制度です。必ずしも教員一筋の学生がいいとは限りません。とりあえずなってみたら面白かった、でもいいじゃないですか。優秀な人材を取るという点では一考の価値があると思っています。
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