こころの時代より
フランクルは、強制収容所から生還したのち、精神科医として働き始めた。 その中で、戦後から、先進国では、多くの若者が新たな心の病を抱えるようになったことに気づいた。それが、生きる意味の喪失感や空虚感だったという。戦争が終わり、状況的には、集団主義から個人主義になり、明らかに自由が増え豊かになったはずなのに、なぜそこで若者は生きる意味を感じられなくなったのか。フランクルは、これらの原因は、「過剰自己観察」から来るということに気づいた。過剰自己観察とは、意識が常に自分に行ってしまうことである。他人が自分のことをどう見ているか、自分の過去がどうだったか、そういうことに囚われ、現在に意識がいかなくなってしまった。
なぜ、過去に囚われてしまうのか。フランクルは、その一端は、フロイトの理論にあるという。フロイトは、精神の問題の根源は、過去にあった出来事に遡ると唱えた。しかしながら、フランクルは、過去の出来事は全てではないと言った。
ではどうすればいいのか。フランクルは、過去に囚われないために、実存主義を提唱した。彼の実存主義とは、眼差しを外に向け、自分の生き方に関して決定権を持つのは自分のみだと考え実行していくということである。自分が中心だ、人生が自分に何を与えくれるか、人生の意味を受動的に考えるのではなく、自分が人生に何ができるのか、そのようなコペルニクス的転回の発想が求められるという。
空虚感の原因を「過剰自己観察」に見出したところに、フランクルの偉大さを感じる。
No comments:
Post a Comment