大学入試における英語民間試験問題とOfqual

Saturday 21 September 2019

学校教育 英語教育


 ますます混乱を極めている大学入試における英語民間試験問題ですが、何が問題かといえば、ざっと挙げただけでも

・複数の民間のテストを使いながら、どうやってその公平性を測るのか

・民間企業にそのような極めて公平性が求められるテストの実施運営を任せていいのか

・民間試験が大学入試の試験を担当すれば、そのカリキュラムやテキストまで全てその企業に牛耳られてしまうのではないか

・テストによっては一回数万円を超えるものもあり、それを家庭に負担させれば、機会均等という立場から、公平性を担保できないのではないか

といった問題がありますね。

この大学入試への民間試験導入という話ですが、英国ではすでに当たり前のように行われています。私は教育行政を学ぶためイングランドの大学院に留学していましたが、初めてその大学入試の説明を向こうの現役教員から聴いた時、「え、そんなことありなの!?」と驚いてしまいました。

 英国の大学受験はA-level試験といいます。この成績結果が大学受験資格として正式に位置付けられているにも関わらず、国によって作成された統一テストではなく、複数の民間企業によって実施され、各学校はどの会社のテストにするかの選択を迫られます。生徒個人ではなく、各学校ごとに選ぶことになっているのです。ちなみにテストを実施する主な民間会社は
  AQA(Assessment and Qualifications Alliance)、
  OCR(Oxford, Cambridge and RSA Examinations)、
  Edexcel 、
  WJEC(ウェールズ)
  CCEA(北アイルランド)

 となっています。

 これらの複数の民間会社のテストの公平性を担保するために、Ofqual(the Office of Qualifications and Examinations Regulation)という非大臣省(政府から独立した公的機関)の資格試験監査機関が監査を行います。私の友人でイングランドで教員をやっている女性によれば、以前はテストごとの難易度が違って大きな問題でしたが、Ofqualによって、最近では少しずつ不公平感が薄まってきたようです。それでも、異なるテストである限り、完全に不公平感がなくなることはない、ということでした。

 しかし問題は他にもあります。その1つは学校のカリキュラムまでが、一企業の支配下におかれるということです。当然のごとく英国の上述の各会社は自分のテスト用の問題集を販売しています。問題集単体ならまだかわいいものですが、実際には、カリキュラム丸々セットで販売しています。なので各学校は、中学校1年生もしくは高校1年生の時点で、どの会社のカリキュラムにするか決めています。また、学校単位でテストを決めると言いましたが、全ての教科が同一の会社を選択するとは限りません。例えば、英語はAQA、数学はEdexcelと言った風に、同じ学校の中でも教科ごとに会社がばらばらになることがあります。

 いずれにせよ、学校のカリキュラムにまで企業が絡んでくれば、自分らの企業、もしくは仲間内の企業に不都合なことはその学校では教えられない、そんなことが当たり前になるでしょう。そんな環境でちゃんとした教育ができるのでしょうか。

 仮にもこのまま民間試験導入を推し進めるのであれば、まずはOfqualのような、政府から独立の監査機関を設置し、各会社のテストを比較検証して徹底的に不公平感を拭う努力をすべきではないでしょうか。