エビデンスからみる学校でのいじめ問題② いじめを取り巻く生徒の役割分類 / いじめを予防する

Tuesday 27 August 2019

学校教育

3.いじめを取り巻く生徒の役割分類

 いじめが起こる際には、5つの生徒の役割が存在するということです。

1. 加害者の中心生徒
2. 周りで笑ったりからかったりしていじめを助長する生徒
3. もともといじめを始めたわけではないが、中心生徒に言われたら一緒になっていじめに加わり得る生徒
4. 被害生徒を守ろうとする生徒
5. いじめが起こっていようが、全く関わろうとしない生徒 (Salmivalli, 1996)


です。
 1のいじめの加害者ですが、どういう子がなりやすいかというと、忍耐力、規範意識、モラルや共感力が欠如している子です(Garner, 2010)。これらは生育環境によるところが大きく、特に両親との関係がうまくいっていない子が多いです。一方、3の被害生徒を守ろうとする生徒は、特に母親から深い愛情を受けていることが多いです。また、被害にあいやすい生徒は、身体的、心理的な特徴があるということです(Janssen et al, 2004)。

4. いじめを予防する

 いじめは「いつでもどこでも起こりうる」という考えのもと、予防対策をとることが重要です。ここでは学校の雰囲気、教員という2つの影響力の強い因子を見てみましょう。

1) 学校の雰囲気
 生徒にとって「いい学校の雰囲気」はいじめを抑止するのに抜群の効果を示し、また家庭状況が困難な生徒がいじめに関わるのを防ぐことができます。いい学校の雰囲気とは、学校規律、サポート体制が整っていることを意味します(Nansel et al, 2001)。逆に、雰囲気が悪いクラスでは生徒も暴力的になることが実証されています(Henry et al, 2000)。

2) 教員
 どのような教員がいじめを予防するのに効果的なのでしょうか。まず明らかなことは、いじめは許さないということをはっきり示している教師のクラスでは、いじめは起こりにくいということです(Henry et al, 2000)興味深いことですが、いじめが起こったら自分で解決できると思っている教員のクラスでは、いじめの状況を悪化させる可能性が高いということです。また、いじめの対応が上手な教師のクラスでは、サイバーブリングのようにいじめがより見えないところで行われ、陰湿になりがちというデータもあります(Saarento, 2015)。