エビデンスからみる学校でのいじめ問題③ 教員の対応

Wednesday 28 August 2019

学校教育

6. 教員の対応

 ほとんどの教員が、「いじめは絶対見逃さない」と思っているのだが(Bauman et al, 2008)、驚くべきことに、Bradshaw et al(2007) の調査によれば、アメリカの中高生に訊いたところ、対象の52%の生徒が、「先生がいじめを見逃しているのを見たことがある」と答えている。

 では教員はどのようにいじめに対応しているのだろうか。Burger et al (2015)は、オーストリアや南ドイツ出身のドイツ語の先生を対象に調査を行なっている。以下が教員の使用した対応方法である。1が一番多くの先生が使い、4はあまり使われなかった方法である。(もちろん多くの教員は1〜4の指導方法を組み合わせて使っていた)



1. 権威型指導:加害者のいじめ行為をはっきりと𠮟り、もし改めないようなら他の懲罰
       を与える。これを行うには、あらかじめいけない行為を明確に示して、全
       生徒が把握しているようにしなければいけない。また全職員が指導を合
       わせる必要がある。
2. 良心引き出し型指導:加害者に自分の行為を振り返らせ、悪かったことを気づかせる
       指導。懲罰は加えない。これが一番生徒の態度を改めるのに効果
       があった。ここで大事なのが、生徒の行為と生徒自身とを明確
       にわけることである。行為を𠮟るのであって生徒自体を否定し
       てはいけない。
3. 協力型指導:他の教員や管理職、保護者と協力していじめの解決をしようとする指導。
       これにより問題がそれ以上こじれることが少なくなった。権威型と組み
       合わせて使う教員が多かった。
4. 被害生徒への対応:被害生徒に対応するという教員は最も少なかった。多くの教員はど
       う被害生徒に対応すべきかわからないということだった。Regby(2010)
       は、自信をつけるように励ますことが、長期的に見れば最も効果があると
       いうことだった。

ここからわかることは、基本的には2と3の組み合わせ、すなわち、複数の教員で、場合によっては保護者にも入ってもらい、加害生徒に自分の行為の悪かったところを振り返らせる指導がベストということだろう。一方で、被害生徒にもっとよりそう指導が必要なことが課題として明らかになっている。