エビデンスから考えるシリーズ:学校でのいじめ問題④ 効果的な指導方法 

Wednesday 28 August 2019

学校教育

7. 効果的な指導方法

 前の研究が示した通り、いじめが起こった際、他の教員や保護者をまきこむことはしても、他のとりまきの生徒に対して対応する教員はいなかった。しかしながら、研究では、周りの生徒に働きかけることがいじめを抑制させる大きな効果を持つことが実証されている。ではなぜそれが効果があるのか。大きく4つの要因がある。
1つは、周りの生徒たち自身がいじめっこの行為を助長しているということに気づいていない。

2つ目に、いじめっこは周りの注目を集め人気者になりたいがためにいじめを行なっているということが多々あるので、周りの子が関心を示さなければやめる方向に動いていく

3つ目に、周りの子らの気持ちを落ち着ける。傍観者らは、それがいけないことだとわかっているのだが、どう行動していいかわからず、自分を責めてしまうことになりやすいという。だから教員が、いじめを見たらどのように働きかけるべかを具体的に教えてやれば、良心の呵責に悩まなくて済む。

4つ目に、被害生徒は一人でも味方がいると、立ち直ることができる。昔いじめられていた成人男性は、「いじめられたという行為より、誰も味方になってくれなかったということの方がつらかった」と答えている。

そこで、Midgett et al (2016)はSTACという傍観者指導型いじめ指導法を提案している。

Sはstands for stealing the show:みんなの注目をいじめっ子から自分に向けさせる。例えば、傍観者の一人に大声で話しかけて冗談を言ってみるなど。

Tはturning it over:大人に伝える。ネットいじめを見たら、それを記録として保存しておく。

Aはaccompanying others:いじめにあった被害生徒に、「あの行為は許せないね。自分は君の味方だよ」と慰めてやる。

Cはcoaching compassion:いじめをした加害生徒に、「君がいじめられる立場だったらどう感じるだろうね」と考えさせる。

SやAは少しハードルが高いが、加害生徒が下級生だったらできるかもしれない。少なくとも、TとAはできる。そしてこれらの行為をすることによって、被害者を救うのみならず、傍観者自身の自尊心も救うことになるのである。


 しかし、そのように模範的な傍観者になるのに、もしかしたら「自分だけいいかっこしてると思われる」ことが嫌で、なかなかできないこともあるだろう。そこで、Shriberg et al (2017)は、教師に選ばれた生徒たち(親にも伝えておく)が中心となって、「いじめ撲滅運動」を実施することを推奨している。内容は、選ばれたリーダーたちの集会、教員へのインタビュー、そしてリーダー生徒と教員の会議である。こうして、生徒たちが自らいじめをなくすことができ、また教員もそれに一緒に立ち向かうということを示すことができる。