レビュー『人間教育の基本原理』杉浦健・八木成和編著

Monday 16 August 2021

  私は何の縁あってか、中学校で教員をやることになった。ちょうど教員を始めて10年ほど経ち、「人を育てるとはどういうことだろうか」という根本的な問題について考えるようになった。そこでインターネットで「人間教育」をキーワードに調べ始め、梶田叡一先生の記事にたどり着いた。そこで先生の著書を読んでみたいと思い図書館で調べたところ、ちょうど出版年が新しい(2020年12月)本書があることを知り、早速手にとって読み始めた。

最終章の対談のところから以下、心に残ったところをまとめる。

・ヒトが人間になっていくには、2段階の自己統制力を身につける必要がある。

  第1段階 : 個人としていろいろな欲求があるが、社会の中で生きていくために、他の

         人と折り合いをつけられる、自己統制ができるようになる。現実を知る。

  第2段階:社会の現実条件の支配下にとどまるなら、自分自身の人生を生きることができ

       ない。生命を賭してでもやり遂げたいと思うようなことを見つけ、追求するこ

       とでができる。価値を見つける。

・今一番欠けがちなのは、「価値」による自己統制である。

・「本人の自覚に任せています」「自分の好きなことを好きなようにやらせる」というのは、

 人間としてダメなことをそのままほったらかしにするということ。しかしスパルタでなけれ

 ばいけないということでもない。大事なのは開示悟入である。開いて、示してやった上で、

 なるほどなと思われせられるような場面を作る、そしてそれが身に入って当たり前になるま

 で訓練する。

・評価する際には、「評価できる部分」と「評価できない部分」があることを教師は自覚すべ

 し。

・「教師一人一人が自分と運命的に出会ったこの相手に関わって、その人に固有な人生の土台づくりをどう支援していくか、これが最後の眼目となるわけです。この意味で、社会に寄与する教育というよりは、自分と運命的に出会ったこの『あなた』のための教育でなくてはならない」


感想:

 教師は自分の教科の専門家であるのと同時に、人間を育てる専門家である。あらためて、「ひと」を教育するとはどういうことなのか、教師は自問すべきことだと思う。