私は何の縁あってか、中学校で教員をやることになった。ちょうど教員を始めて10年ほど経ち、「人を育てるとはどういうことだろうか」という根本的な問題について考えるようになった。そこでインターネットで「人間教育」をキーワードに調べ始め、梶田叡一先生の記事にたどり着いた。そこで先生の著書を読んでみたいと思い図書館で調べたところ、ちょうど出版年が新しい(2020年12月)本書があることを知り、早速手にとって読み始めた。
最終章の対談のところから以下、心に残ったところをまとめる。
・ヒトが人間になっていくには、2段階の自己統制力を身につける必要がある。
第1段階 : 個人としていろいろな欲求があるが、社会の中で生きていくために、他の
人と折り合いをつけられる、自己統制ができるようになる。現実を知る。
第2段階:社会の現実条件の支配下にとどまるなら、自分自身の人生を生きることができ
ない。生命を賭してでもやり遂げたいと思うようなことを見つけ、追求するこ
とでができる。価値を見つける。
・今一番欠けがちなのは、「価値」による自己統制である。
・「本人の自覚に任せています」「自分の好きなことを好きなようにやらせる」というのは、
人間としてダメなことをそのままほったらかしにするということ。しかしスパルタでなけれ
ばいけないということでもない。大事なのは開示悟入である。開いて、示してやった上で、
なるほどなと思われせられるような場面を作る、そしてそれが身に入って当たり前になるま
で訓練する。
・評価する際には、「評価できる部分」と「評価できない部分」があることを教師は自覚すべ
し。
・「教師一人一人が自分と運命的に出会ったこの相手に関わって、その人に固有な人生の土台づくりをどう支援していくか、これが最後の眼目となるわけです。この意味で、社会に寄与する教育というよりは、自分と運命的に出会ったこの『あなた』のための教育でなくてはならない」
感想:
教師は自分の教科の専門家であるのと同時に、人間を育てる専門家である。あらためて、「ひと」を教育するとはどういうことなのか、教師は自問すべきことだと思う。
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