NHKスペシャル「世界は私たちを忘れた~追いつめられるシリア難民~」を見て。

Saturday 24 October 2020

その他

 胸の抉られるような内容であった。シリア難民の苦しむ姿を取材したドキュメンタリーである。

 シリアはここ10〜20年で内戦がさらに悪化し、多くの市民が難民となって隣国に避難した。そこでは仕事がなく、食べ物も十分に得られないため、大変な生活を強いられてきた。これらの状況にさらに追い討ちをかけたのが、コロナ感染拡大である。仕事が激減し、今日明日のパンを得るのも簡単ではなくなってきているという。

 本番組では、現在絶望的な状況にある家族の様子が映し出された。幼い息子が突然誘拐され、数日後にフェイスブックの写真で、ゴミ捨て場に横たわっている息子の姿を発見したという母親が登場した。その息子の腹部にはメスの跡があって、臓器を奪われたことが明白だったという。その男の子の妹が涙を堪えながら取材に答える様子は、とても表現できないほどの悲しみを催させるものだった。また、別の家族で、家族をこれ以上養うことはできないと判断し焼身自殺を図った父親の映像も流された。その息子は、「これは我々シリア人だけの問題ではない。いつどこで起こっても不思議ではない。」というようなことを言っていた。ここまで対岸の火事のような気持ちで、いわば「他人事」として見ていただろう私は、どきっとしてしまった。そう、何かあればこんな状況にはあっという間になってしまうのである。明日は我が身である。今たまたま比較的幸運な状況にある私は、彼らのために自分ごとして動かねばならない。そう強く感じさせるものだった。