中高生に話したいことシリーズ:クラーク博士の名言について 

Monday, 16 March 2020

学校教育

 "Boys, be ambitious!"「少年よ、大志を抱け」

  今から150年程前、300年近く続いた江戸時代が終わり、明治時代になりました。これから国全体で欧米のような近代化をすすめていこうという中で、札幌に札幌農学校(現北海道大学)が設立されました。札幌農学校は、日本で初めて、大学生課程修了において与えられる「学士」を授与した大学(高等教育機関)です。この学校に教頭として英国から招かれたのが、冒頭の一節を残したクラーク博士です。そして彼が任期を終え、帰国する際に、学生らを鼓舞するために言った一節が冒頭の言葉です。

 Boys, be ambitious!

 ambitiousは「野心的な」とよく訳がつきますが、「お金もちになって、名誉を得て、成功したい」というまさに「欲」を表す単語のようです。しかし、彼のその後のスピーチを聞けば、彼が言いたかったのはそういうことではないのがわかります。

“Boys, be ambitious! Be ambitious not for money or for selfish aggrandizement, not for that evanescent thing which men call fame. Be ambitious for the attainment of all that a man ought to be.”

 訳すと「青年よ、大志を抱け。それは金銭や我欲のためではなく、また、人が名声と呼ぶあの空しいもののためであってはならない。人間が人間として、当然備えていなければならない、あらゆることを成し遂げるために大志を抱け!」と呼びかけたのです。
(引用:http://www.christian-center.jp/chapelhour/2014/wed_tanabe/0416.html)
 
  この言葉は、その後の日本の発展に大きな影響を与えた人々、例えば新渡戸稲造や内村鑑三などにも感銘を与えたようです。

 「お金持ちになりたい」「有名になりたい」という欲は、人間誰しもが抱えうる気持ちです。しかし、クラーク博士はそのようなものに惑わされてはいけない、それよりも、人間がそうあるべき姿を獲得しなさい、つまり、立派な人格をもつことを人生の目的とせよと言ったのです。

 今世の中を見てみると、「いいね」を100万も獲得しただの、何億儲けただのということがもてはやされがちです。確かに生きていくためにお金は必要ですし、できるなら自分が生きていくためのお金は自分で稼ぐべきでしょう。しかし欲を追求した人生の先には何があるのでしょうか。「欲」というのに終わりはありません。いくら儲けても、また人気になっても、「もっともっと」となり、欲によって人生が狂ってしまうというのは、歴史の人物を学べばわかることです。では、何を人生の目的とするのか。それが、立派な人格、言いかえれば、人格の完成だと、博士は言っているのです。

 人格の完成とはどういうことでしょうか。博士がスピーチの中で「人間が人間として、当然備えていなければならない」ものとは、どういうことなのでしょうか。

 みなさんにとって「人格のある人」、言い換えれば、「立派で尊敬できる人」ときいて、どのような人を思い浮かべるでしょうか。努力家、ストイック、思いやりがある、他人のために働く、など様々でしょう。私にとっては、

(続)