みなさんはこの名前をご存知だろうか。私は主治医に教えていただいた。彼の人生での出来事があまりにも私自身の境遇と似ていたので(彼のような天才的な能力という部分ではなく、彼の日常生活の出来事においだが)、そして彼のナルコに対する考え方が励ましになるということを信じて、ここに紹介したい。
ジョージ・チャーチ、彼はハーバード大学の遺伝子学者で、タイムズの「2017年にもっとも影響を与えた100人」(『Time’s 100 most influential people of 2017』)に選ばれたという偉人である。
最近では、2019年6月5日のNHK『クローズアップ現代+』の「マンモス復活、狂騒曲の舞台裏」という番組に登場していた。チャーチ博士は、ゲノム編集という技術を使えば、10年以内にマンモスを復活させることがほぼ可能になるという。以下、番組内での武田アナウンサーと慶應義塾大学の宮田教授の発言である。
武田:私もマンモスを見てみたいとは思うんですけれども、一方で、1万年前に絶滅したものを、このように復活させていいんだろうかという思いもします。この取り組みには、どういう意義があるんでしょう?
宮田さん:チャーチ教授たちの計画は、ツンドラにマンモスがかっ歩する、こういった生態系を構築し、ジュラシックパークならぬ、氷河期パークというものを作ろうとする。この構想においては、マンモス復活はあくまでも手段です。氷河期パークというのが実現するかはともかく、彼らの説明によると、寒冷地でも生存可能な草食動物が復活すれば、土壌が再生され、ツンドラを草原に戻すことができるんじゃないかと。ここからさらに飛躍するんですが、そうした大規模な草原で、地球温暖化から救えというのが彼らの構想です。
宮田さん:チャーチ教授たちの計画は、ツンドラにマンモスがかっ歩する、こういった生態系を構築し、ジュラシックパークならぬ、氷河期パークというものを作ろうとする。この構想においては、マンモス復活はあくまでも手段です。氷河期パークというのが実現するかはともかく、彼らの説明によると、寒冷地でも生存可能な草食動物が復活すれば、土壌が再生され、ツンドラを草原に戻すことができるんじゃないかと。ここからさらに飛躍するんですが、そうした大規模な草原で、地球温暖化から救えというのが彼らの構想です。
武田:壮大な構想があるわけですね。実現できるんでしょうか?
宮田さん:一方で、彼ら、ハーバード大学の狙いは、こうした構想の中で技術を磨くということにあります。ゲノム編集だったり、iPS細胞、こういった最先端技術を用いて、このマンモス再生に挑戦する前から、彼らは老化防止とか、移植用臓器の培養というものを進めていたんですね。こういった氷河期パークという大義があれば、最先端技術を磨く場を作れるということになるのかなと思います。
彼はナルコレプシー患者であるが、同時にディスレクシア(学習障害の一種で、知的能力及び一般的な理解能力などに特に異常がないにもかかわらず、文字の読み書き学習に著しい困難を抱える障害)でもあるという。その彼は取材において、ナルコレプシーのことを「特性であって、欠陥ではない」(a feature, not a bug)といっていて、その革新的なアイディアはナルコレプシーのおかげとまで言っているのである。この記事を見てみよう。(https://www.statnews.com/2017/06/08/george-church-narcolepsy/)
この記事によると、彼はあまり自分のナルコレプシーのことをこれまで積極的には語ってこなかったようである。ただ分かっていることは、彼は朝の6時から夜の6時まで何も食べ物を口にしないといい、いつもできる限り立っているという。また、神経系を刺激し、うたた寝しないようにするために「私は継続的に自分の体重とバランスを変えるようにしなければならない」と答えている。
彼は会議が嫌で、そのたびにうたた寝してしまうのだが、自分の名前が呼ばれたり、あることに関して質問されると、たいてい聞き直しせずにちゃんと応えることができるという。
彼はこの記事のインタビューで初めて、ナルコレプシーとの自分の過去、いつナルコレプシーということを知ったのか、どのように付き合ってきたのか、どうしてナルコレプシーのために標準薬を飲まなかったのか、娘さん(同様にナルコレプシー患者)と自分が学校の先生との面談中に二人とも寝てしまったこと、そしていかに彼の業績をナルコレプシーが特徴づけてきたかを述べている。
彼は遺伝子というものが、読んだり書いたりできるものだという革新的なアイディアを、うたた寝している最中に思いついた。「50、60歳くらいになってようやく、ナルコレプシーが特性であって、欠陥ではないということがわかるようになった。」と言っている。
彼は脳の働きが普通の人と違う人々が、この時代にとって必要であり、益となると確信している。「世界は高機能自閉症や、強迫性障害、注意欠陥・多動障害の人々を必要としている。そしてナルコレプシーもその1つだ。」
中学三年生のとき、いつも数学の授業で寝てしまっていたが、数学が大好きで、その学期にやるべき範囲を数週間で家でやってしまった。そこで数学の先生が「学校に来なくてもいいから、家で自分でやりなさい」と言ってくれ、そのようにした。
それが彼を容赦ないあざけりの対象から免れさせてくれた。学校では、“少し違う”生徒はからかいの対象になりがちで、実際、高機能自閉症の子がそのターゲットになっていた。彼はなるべく周りの生徒に気づかれないよう、ひっそりと教室で過ごしていた。
大学に進学し、周りの生徒も結構寝ているのを見て、「よし、自分は普通だ」と思った。しかしながら、教員らに目をつけられ、学部長に自分だけチョークを投げつけられた。
彼は運転も数年間していた。眠くなったら、道路の脇に移動してサイドブレーキをかけて眠った。しかしあとから考えて、自分の運転者としての無責任さに気が付いて、運転をやめた。
彼は同僚のハーバード大の生物学者のTing Wuと結婚し、娘を授かった。彼女は現在26歳になるが、父親同様、ナルコレプシーを患っている。(ナルコレプシーの患者の子供は普通の人々と比べて、40倍のナルコレプシー発症リスクがあるという)
「セミナーなどでの講義では終わりに素晴らしい質問をしてくれる者たちがいるものだが、私はその一人ではなかった。私はいつも、『たとえ2分間寝入ってしまったからといって、きっと質問には答えてくれるだろう。しかしばかにされるだろう』と考えていた。私は中高生の頃を振り返ると、授業ではいつも一番後ろに座って、何も言わず、ばれないようにひっそりとしていた。おそらく、それこそが、もっとも悪いことだった。」
彼は止むを得ず座るときはもちろん座るのだが、何かと言い訳をつけて立つようにしている。カフェインなんて効かない。娘の高校の三者面談では、面談中に親子そろって寝てしまった。教員たちは「ふざけてわざとそうやっているのではないか」と考えていたという。彼はそのことを怒りというより、悲しみを込めながら回想している。
しかしながら、彼は脳の働きが他の人と違うことは、疾患であるとか治療の対象だとは考えていない。
だからモディオダールも飲んでいない。「あれは確かに眠気は多少とってくれるかもしれないが、創造力を減らしてしまう。」
「ナルコレプシーで他にもいいことだってあるんだ。例えば、飛行機に乗ったら、離陸から着陸まで、エコノミーで椅子を倒さなくてもしっかりねれるんだ。」
彼は様々な脳の“機能障害”と捉えられているものを、多様性として受け入れる土壌が社会で必要だという。彼はディスレクシアやADHD,OCD
、その他疾患とされている人々が偉業を成し遂げているのをさまざまなサイトで見て、インスピレーションを得ている。「他人と違うものを持っているということは、箱の外から考えることができるということである。」
「君が持っている違いは、君がその箱から取り出すべきものをしめしてくれるものになるかもしれないのだよ」
The kind of difference you have maybe determines what direction you’ll take out of the box.
以上、拙訳です。多少の誤訳はご容赦ください。
何かコメントがあればぜひお願いします。
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